

琳琅 No.171 2021年11月号より①
| サックスのソロで描けば この夏は | 岡田 俊介 |
| サックスはジャズや吹奏楽によく用いられる楽器。音量豊かで柔らかい甘美な音色は、マリリン・モンローが愛したことでも知られる。そのサックスの特長をシックに活かした掲出句は、抑えた表現が効果的で余韻十分。短詩文芸では言い切ってしまうと負けだ。同じ作者の、燻し銀の表現とでも云うべき〈人影の振り向くまでを晩夏とす〉の句からも、サックスの哀愁を帯びた音色が聞こえてきて、暫時こころに沁みた。〈細川不凍〉 | |
| 衝撃は空の凹みの水たまり | 岩崎眞里子 |
| 「衝撃」は外的なモノなのか内的なコトなのかミステリアスな空模様である。スケールの大きな「空の凹みの水たまり」はポニーテールの少女が軽やかに飛び越える童話の愛らしい凹みなのかも。そして、鳥とか魚とか言の葉とかが生まれる凹みなのかも知れない。〈澤野優美子〉 | |
| 月を見る窪地を少し持っている | 福田 文音 |
| 心が揺れる時に、物事を包み込んでくれる月を見たくなる。「窪地」にゆったりとした気分になるのは「少し持っている」と欲張りすぎず慎ましいからと思う。誰にも教えていない文音さんの月を見る秘密基地なのかも知れない。〈岩崎眞里子〉 | |
| 野火走る地獄門まで香を抱いて | 新井 笑葉 |
| 昏れて野は祖の匂いたつ曼殊沙華 | 大谷晉一郎 |
| 眷春の日傘九月の森を抜け | 林 勝義 |
| 雨はしとどにカルピスは濃厚に | 吉田 州花 |
| 束の間を茂る緑の命がけ | 野邊富優葉 |
| 無花果を割れば出てくる 諤々 | 重田 和子 |
| 錯角の位置にふたつの椅子を置く | 氈受 彰 |
| 苦しみは打ち上げ花火上がるまで | 伊藤 礼子 |
| パンクせぬ自転車 青を漕ぎながら | 岩渕比呂子 |
| 眼底に父の静かな山がある | 藤本 健人 |
| 行く夏の南部風鈴微かなり | 松井 文子 |
2021.11.10
























